7月28日深夜、北朝鮮は同月2回目となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行した。折しもその数時間前には、かねてより国防分野への理解不足も指摘されていた稲田朋美防衛相が「日報問題」で辞任。東アジア情勢の緊迫感が増しているさなか、与党・自民党は内閣改造、野党第一党の民進党は代表選と、互いに腰が据わらない。

『週刊東洋経済』2017年5月13日号では、与野党の安全保障分野の政策通として知られる2人の政治家に、自衛隊が北朝鮮などの脅威にどう対処するかを聞いている。あらためて読み返してみたい。

 

ミサイル防衛の整備で「拒否的抑止力」を

INTERVIEW| 自民党(元防衛相)石破茂

いしば・しげる/1957年生まれ。慶大法卒、86年衆議院議員に初当選、当選10回。2002〜04年に防衛庁長官、07〜08年に防衛相。(撮影:梅谷秀司)

──北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を続けています。日本にとって新たな脅威になりますか。

特にそうとは考えていない。「新しい局面」「新しい危機」という表現も一部で聞かれるが、日本全土が射程内にある「ノドン」は200発前後あり、すでに十数年前から配備されている。長距離弾道ミサイル「テポドン」も1998年には1回目の発射実験が行われている。ノドンの命中精度がかなり高いというのも以前からわかっている。

今回は4発同時に打ち上げられた映像の効果が大きいのだろう。ただし、以前と大きく変わった点として、液体燃料でなく固体燃料を使い、すぐに発射できるようになったことと、発射装置が運搬式になったことがある。運搬式になればどこから発射されるか予測しにくい。

──北朝鮮には核兵器があります。

断定はできないが、北朝鮮にとって核はあくまでも米国への対抗手段であり、日本に対して使用するメリットがない。もちろん保有自体許されざることだが、実際に使われたら(核の報復を受けて)終わりだ。日本に対しては工作員や特殊部隊を使ったほかの攻撃手段も十分考えられるため、日本に向けて核攻撃をするとは考えにくい。

──通常兵器による北朝鮮の軍事的脅威はどう考えますか。

安全保障は万が一の事態に備えるべきものであり、ミサイル防衛も国民保護も「拒否的抑止力」として機能する。相手は想像を絶する独裁体制の国であり、通常では予想もしないような展開もありうるため、政府としては想定を広げておくべきだ。

──いわゆる先制攻撃論は?

専守防衛の原則は変えない。しかし相手のミサイル発射準備が目前に迫っていると察知できた場合に、敵基地を攻撃するのは自衛権の行使として許される。これは先制攻撃とは別のものだ。

──中国の軍事的脅威については?

日米同盟が中国の軍事力に対して優位にあるかどうかをつねに点検しなければならない。中国には戦略的国境という概念があって、国力に応じて国境が変動するのは当然と考える。尖閣諸島を自国の領土だと考えれば、公船や漁船を近づけ、実効支配を少しずつ既成事実化しようとするだろう。漁民を装った海上民兵が上陸することもありうる。警察権でどこまで対処し、どこから自衛権の行使で対処すべきかを早急に詰める必要がある。海上民兵が上陸した段階では米軍は動かない。日本が的確に対処するには、事態の推移に応じた海上保安庁、警察、自衛隊の役割分担が必要だ。

──PKO(国連平和維持活動)について自衛隊の役割は?

憲法上の制約は、「国際的な紛争の一環としての戦闘行為」の禁止。この「戦闘行為」はなくとも明白に危険な地域はあり、だからこそ自衛隊が派遣されることになる。

 

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