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新型のボールペンを開発した三菱鉛筆 文房具の未来について三菱鉛筆の竹内さん(後列右)に取材した白石さん(前列右)と七里さん(同左)と東洋経済の山川さん=神奈川県横浜市、三菱鉛筆横浜研究開発センター

転載元
朝日小学生新聞
2017年(平成29年)12月18日(月)

指令ペンの未来はどうなるの?

今回は新型のボールペンを開発した三菱鉛筆を取材しました。
こども編集長
白石幸々さん
白石幸々(しらいしここ)さん
神奈川県・小学6年生
七里浩一朗さん
七里浩一朗(しちりこういちろう)さん
神奈川県・小学4年生

インクの質の向上へ
誰もが満足なペンを

ボールペンの仕組みを説明する竹内さん。ペン先のボールが転がり、紙にインクをつけます

鉛筆やボールペンなどみなさんも毎日使う筆記用具。とても身近なものですが、もっと良いものを開発しようと努力を続ける人たちがいます。

三菱鉛筆が世界初の技術を使った新しいボールペンを開発したと聞き、横浜研究開発センター(神奈川県横浜市)を訪ねました。

三菱鉛筆は1887年に鉛筆作りを始めました。その後、ボールペンを売り始めたのは1958年。最初に作ったのは「油性」ボールペンでした。油性はにじみが少なく、構造が単純で価格が安く作れる特徴があります。ところが書き味はやや重く、線もうすくなる不満がありました。

そこで66年に水性ボールペンが発売されました。さらさらと書けて、色もこいのですが、にじみやすく、価格も高めです。

手書きの個性光らせる

油性や水性インクのねばりけのちがいを確かめる七里さん

そこで94年に発売したのが水性ゲルインクボールペンです。このタイプのインクは、普段はねばねばしているのに書いているときだけやわらかくなるという性質があり、書き味が軽く、にじみにくいボールペンへと進化しました。

ところが水性ゲルインクも完ぺきではありません。書いている途中でペン先のボールの周りにたまったインクが落ちる「ボテ」と呼ばれる現象がおきたり、速いスピードで書くとかすれたりすることがあります。

こうした現象をなくすには、書き始めた瞬間からインクがさらさらになる必要があります。これを解決するために使われたのが、セルロースナノファイバーです。木の繊維を細かくばらばらにして作られ、今までにない強度を持ち、さまざまな物質を改良する素材として注目されています。

白石さんと七里さんはセルロースナノファイバーで作ったゲルインクをふってみました。最初はこんにゃくのように固まっていましたが、瓶をふるとチャポチャポと音がするほどなめらかになりました。

最初は繊維の成分が沈殿するなど失敗が続き、開発は楽ではありませんでした。数千もの試作を重ね、2年がかりでボールペン「ユニボール シグノ 307」を完成させたといいます。

ボールペンの筆記テストの様子を見る白石さんと七里さん

「どうやってアイデアを集めますか?」と七里さん。センターの竹内容治さんは「社内はもちろん、時にはちがう会社の人との話の中から、アイデアに結びつくことがあります。人と話すことは大切です」。

白石さんは「お気に入りのペンは?」と質問。「もちろん307ですね。ですがこれからも、誰が書いても不満のないペンを作っていきたいです。デジタル機器が広まり、文字を書く機会は減るかもしれません。でも手で書く文字はその人の個性を表します。今後は、その人の個性をより表しやすいような新しい筆記具を考えていきたいです」

(構成・今井尚)

Q ペン以外に作っているものは?

ボールペンのペン先を作る細かい加工技術を生かして、光ファイバーをつなぐコネクターを作っています。また化粧品や、鉛筆の芯の技術でカーボン(炭素)製の部品なども作っています。


取材をしてみて
七里浩一朗さん

ペン1本やほんの少しのインクに、長い時間と思いがこめられ、いろいろな人が関わり、こだわってつくられていることを知り、すごいなと思いました

白石幸々さん

油性ボールペンと水性ボールペンのちがいがよくわかりました。紙に書くことで人の個性が出る、ということもよくわかりました

山川記者の目文房具の進化を担う日本製

昔の財閥から生まれた三菱グループとマークが同じですが、三菱鉛筆は三菱グループではありません。逓信省(今の総務省)に納めた3種類の濃さの「局用鉛筆」にちなんで、三菱グループより10年早く商標登録しています。高級鉛筆の「ユニ」がロングセラーとなり、uniマークは会社のロゴにも使われています。

文房具では、書きやすいボールペン、消せるボールペンなど、優れた機能を持つ商品が次々に発売されていますね。今でも新しい技術を開発し続ける文具メーカーは世界でも数えるほどしかなく、ほとんどが日本の会社だそうです。

2016年の筆記具類の輸出額は999億円、輸入額は248億円(財務省貿易統計)で、輸出のほうが多いです。中国や新興国と比べて単価が高くても、高品質・高機能が人気です。日本が開発をやめたら、文房具の進化が止まってしまうといわれています。いい商品を手頃な値段で開発していけば、日本製文房具はこれからも世界で売れるでしょう。

『会社四季報』副編集長 山川清弘

三菱鉛筆株式会社
〒140-8537
東京都品川区東大井五丁目23番37号
TEL:03-3458-6221(代表)
HP:https://www.mpuni.co.jp/

50周年記念企画 「未来を見に行こう」

子ども向け全国紙、朝日小学生新聞の創刊50周年記念企画。「最新の事象がコンパクトにわかりやすくまとまっている」と、経営者やビジネスマンの間でも密かに支持されている『朝小』と「週刊東洋経済プラス」が「未来を見に行こう:現場編」としてコラボレーション。未来の技術をテーマに、子ども記者と『週刊東洋経済』副編集長 山川清弘の異色タッグが企業に共同取材します。『朝小』紙面で月1回程度連載、『プラス』でも転載記事が公開されます。

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文房具事務用品

筆記具中心に高付加価値品でヒット多数

オフィスの備品としての需要は減るが、個人向けの高付加価値品が牽引。パイロットの消せるボールペンや三菱鉛筆の書き味が滑らかなボールペン、ゼブラの芯が折れづらいシャープペンシルなど。ファイルはキングジムやナカバヤシが機能を工夫した商品を開発。オフィス家具を扱うコクヨやプラスには働き方改革が追い風だ。各社は海外展開に意欲的で、ぺんてるは海外売上比率が6割を超える。

「週刊東洋経済」の歴史から

山東昭子氏が横浜工場を訪問、数原社長と一問一答

昭和39年(1964年6月13日号)

三菱鉛筆を本誌が本格的に取り上げたのは1964年6月13日号。今回、朝小リポーターと訪問した横浜工場へ山東昭子氏(現参議院議員)が訪問し、数原洋二社長(現相談役)にインタビューをした様子が記事になっている。数原社長は工学博士で大学時代からタングステンを研究、父三郎氏の後を継ぎ社長になり、高級鉛筆「ユニ」の開発などに携わった。米国では一般的な消しゴム付き鉛筆がドイツでは一般的でなく、その影響を受けた日本でも消しゴム付きが少ないこと。あるいは、日本語の書き方とアルファベットの書き方の違いが、紙に当たるペンの角度の差となり、商品性にも影響を与えている点など興味深い分析が多い。

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