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ホンダエアクラフトカンパニー ホンダエアクラフトカンパニーの藤野社長(左から2人目)に取材した癸生川さん(左)と東洋経済の山川さん(右)。朝日中高生新聞の中高生特派員、皆川明さん(右から2人目)も同行しました=東京・羽田空港

転載元
朝日小学生新聞
2017年(平成29年)11月6日(月)

指令飛行機の未来は
どうなるの?

今回はホンダエアクラフトカンパニーを取材しました。
こども編集長
さん
癸生川雄也(けぶかわゆうや)さん
東京都・小学4年生

好きな時やところへ
小型ジェットでGO

「自分の飛行機で好きな時に行きたいところに行く。アメリカではすでに、そんな飛行機の使い方をしている人がいるんです」。アメリカで、小型ビジネスジェット「ホンダジェット」を製造・販売する会社「ホンダエアクラフトカンパニー」社長の藤野道格さんは言います。

取材はゆったりした機内で行いました

「今はまだあまりなじみのないビジネスジェットを、多くの人に使ってもらい、みんなの常識を変えていきたい」

ホンダジェットは7人乗り。これまでオートバイや自動車を身近な乗り物にしてきたホンダが、30年近い年月をかけ開発しました。今年の1~6月期には、出荷数(24機)が、このクラスで世界一になりました。

9月末、「80日間世界一周の旅」に出たホンダジェットのオーナーが東京・羽田空港に立ち寄った機会に、機内で癸生川雄也さんが藤野さんに取材しました。

細かな目標設定で前へ

「ホンダジェットのデザインにはどんな思いがこめられていますか?」と質問すると、藤野さんは「私は設計者です。飛行機をつくる時にはスポーツカーみたいに色を選べるような飛行機にしたいと思いました」。現在、赤、緑、黄、銀、青の5色から選べます。

主翼の上に置かれたエンジンが特徴です=本田技研工業提供

4人向かい合わせに座れる機内はゆったりしています。このクラスではめずらしい完全個室のトイレを備え、大きな荷物室があることも特徴です。室内を広くできたのは、主翼の上にエンジンをのせるという、これまでの常識を破る設計をしたからです。

藤野さんは設計者になることが小学生時代からの夢でした。工作の課題ではだれよりも遠くまで走れるゴム動力の車を作りました。大学に進むときには迷わず工学部を選びました。

飛行機をつくるには技術をみがいてすぐれた機体をつくるだけでなく、各国の認定機関に認めてもらうことも必要です。

アメリカやヨーロッパのメーカーが主流の飛行機づくりの世界で、日本人である藤野さんはときにくやしい思いもしました。それでも認めてもらうよう、ねばり強く努力しました。そして今「コツコツ努力していれば、認めてくれる人もいる」とふり返ります。

操縦席に座る癸生川さん。タッチパネルなどを取り入れ、操縦のしやすさにもこだわっています

「夢を実現するには何が大切ですか?」と聞く癸生川さん。「大きな夢を持つことは大切ですが、もう少し近い目標を設定し、そこに向かってあきらめずに前に進むことも大切です。目標は遠くても、毎日少しずつ積み重ねていくと、不思議といろいろな人に出会ったり、気づかなかったことに気づいたりします」と藤野さんは答えます。

ホンダジェットは日本ではまだ市販されていません。ただ藤野さんは「ホンダジェットで日本中を飛び、富士山、三陸海岸、熊本の阿蘇山を見たとき、すばらしいなと思いました。自分の作った飛行機で、空から日本の景色を見るなんて想像したこともありませんでした。一人でも多くの人にそういう経験をしてほしいと思います」と話します。

(構成・今井尚)

Q どんなものからデザインを学んでいますか?

洋服や靴、時計、絵画なども見ます。とはいえ飛行機の形はほとんど計算で決まります。すぐれた設計をつきつめていくと、結果として美しい形になるんだなと思います。


取材をしてみて

将来の夢はパイロットです。藤野社長はとても優しくて、とてもわかりやすい説明をしてくれました。ぼくも将来、藤野社長みたいになって、そしてパイロットにもなってみたいです。

山川記者の目環境とおさいふにやさしく

ホンダの創業者、本田宗一郎さんは子どものころから飛行機にあこがれ、自分の会社でもいつかつくりたいと考えていました。ホンダジェットをつくったホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長は、1986年からずっとジェット機の開発をしてきました。何度か社内でもやめることが決まりかけましたが、それを乗りこえて完成までこぎ着けました。

エネルギー消費が少なく環境に優しい機体になっています。主翼の上にエンジンを置くことで、機内のスペースが広く取れるだけでなく、地上への騒音を減らすことにも役立っているそうです。

ホンダが開発した自動車「シビック」はかつてアメリカで大ヒットし、多くの人々の移動手段になりました。ホンダジェットも、割安な小型機から発売することで、多くの人々に普及させることをねらっています。タクシーのように利用してもらうことも考えているそうです。みなさんが大きくなるころには、安い料金で乗れるようになるかもしれませんね。

『会社四季報』副編集長 山川清弘

本田技研工業株式会社
〒107-8556
東京都港区南青山2-1-1
TEL. 03-3423-1111(代表)
HP:http://jp.hondajet.com/

50周年記念企画 「未来を見に行こう」

子ども向け全国紙、朝日小学生新聞の創刊50周年記念企画。「最新の事象がコンパクトにわかりやすくまとまっている」と、経営者やビジネスマンの間でも密かに支持されている『朝小』と「週刊東洋経済プラス」が「未来を見に行こう:現場編」としてコラボレーション。未来の技術をテーマに、子ども記者と『週刊東洋経済』副編集長 山川清弘の異色タッグが企業に共同取材します。『朝小』紙面で月1回程度連載、『プラス』でも転載記事が公開されます。

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航空機産業

旅客機市場は一服、三菱MRJ苦闘続く

LCC(格安航空会社)の普及や新興国の新規路線就航が続く。ただ、世界2強の米ボーイングと欧エアバスの受注が大型機の失速で足元では落ち込んだ。原油安で航空会社が燃費のよい新型機の導入を急いでいないため。三菱重工業が小型旅客機「MRJ」を開発中だが作業は難航。一方、ホンダ子会社のホンダジェットは小型ビジネスジェット機で世界最多の出荷を記録(17年1~6月期)。

「週刊東洋経済」の歴史から

航空界の「常識」を超越したホンダジェット

平成20年(2008年9月20日号)

ホンダ(本田技研工業)は本誌の常連だが、ホンダジェットの初登場は2008年9月20日号。特集「激烈!世界の航空機ビジネス ボーイングvs.三菱vs. HONDA」として、日本勢では三菱重工業のMRJと並んで紹介されている。尖ったノーズ、翼の上のエンジンなど、型破りなデザインから「見たこともない航空機がやってきた!”非常識”なヒコーキ、ホンダジェットの勝算」とタイトルがつけられた。藤野道格・ホンダエアクラフトカンパニー社長も2ページのインタビュー記事で登場。翼の上にエンジンを置く設計の実現までの苦労や、ノーズ(機首)のデザインがフェラガモのハイヒールからイメージされた逸話などが語られている。

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