日本海に面した福井県越前町。かつて漁業と観光で栄えた町は今、深刻な空き家問題に直面している。

町内の空き家は2013年末で556軒。問題はその半数が、越前海岸に集落が広がる旧越前町に集中することである。

旧越前町にある玉川地区では、59軒のうち26軒が空き家として放置されている。05年には近隣区で9戸を全焼する火災が発生したこともあり、区長を務める桝谷桝一さん(75)は、「何といっても火災が心配。日々パトロールをしているが、こうも空き家が多いと限界がある」と語る。

福井県越前町の玉川地区にある空き家。各戸に温泉が引かれており、かつては漁業と観光で栄えた

玉川地区の住民は8割以上が65歳以上。子ども世代は福井市や鯖江市など周辺の市町に出ていった。「昔は長男が戻ってきたものだが、もうそんな時代じゃない」(桝谷さん)。玉川地区外にいる所有者に家の維持を依頼すると、「越前の家は邪魔。うまく売り先を見つけてくれないか」と逆に頼まれる始末だ。

もちろん対策は進めている。桝谷さんは玉川地区外にいる所有者から年2000円の協力費をもらう。正月や盆に帰省することがあれば、桝谷さんのところに顔を出すようお願いする。そうしなければ、家の所有者としての責任感がますます希薄になるからだ。昨年には町、そして県外の専門家と連携し、空き家活用の検討会を開いた。現在は1軒の空き家を改築し、移住体験施設として活用するプロジェクトが進む。