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(撮影:村上悠太)

昼下がりの上野駅13番ホームには静かな時間が流れていた。

3月17日木曜日、15時35分。シルバーに光る2階建ての列車がゆっくりと推進運転(バック)で入線してきた。上野─札幌間を結ぶ最後の寝台客車特急「カシオペア」だ。

12両の客車がホームに停車し、ドアが開くと食堂車を中心に荷物の積み卸しが始まる。

「台車、通りまぁーす!」 作業員たちが甲高い声を上げて、荷物を積んだ台車を押していく。

「じゃあ、気をつけてね」 「札幌に着いたら連絡するね」 あちこちで、見送りの人と乗客の挨拶が交わされる。21世紀に入って15年あまり。ここ上野駅13番ホームだけは、今も人々が北へ旅立つ停車場の趣を残していた。

カシオペアは、全2階建て、オールA寝台個室の豪華列車だ。1988年、青函トンネルの開通とともに登場したブルートレイン「北斗星」の人気を受け、さらに豪華で居住性の高い「スーパー北斗星」として企画された。本格的な車両開発が始まったのは93年。専用のE26系客車が1編成12両製造され、99年7月から運行を開始した。当時すでに寝台列車の衰退は始まっており、24系25形寝台車の製造終了以来19年ぶりとなる新型寝台客車の登場は、大きなニュースとなった。