酒を飲むのはいいが、気が大きくなって重要な秘密を漏らすことがある。そこをライバルたちが突いてくる(CTK/時事通信フォト)

陰険な手法でライバルを陥れるのに、最も頻繁に用いられる武器が酒だ。筆者がモスクワの日本大使館に勤務していた頃は、それこそ浴びるように酒を飲んで、相手から情報を取ることがよくあった。

拙著『国家の罠』『自壊する帝国』(ともに新潮文庫)や『交渉術』(文春文庫)にそのときのエピソードを記したせいか、筆者を大酒飲みと勘違いしている人が多い。会食の席で相手が気を利かせてウオトカを用意していることが多いが、「ウオトカはモスクワで一生分飲みました」と言って、筆者が炭酸入りのミネラルウォーターだけを飲んでいるのを見て、招待してくれた人は怪訝そうな顔をしている。

実は外交官時代から、筆者は自宅で酒を飲むことはほとんどない。外交官は職業柄、ホームパーティをしなくてはならないので、自宅に数十種類の酒を買い置きしていた。一時期は、アイリッシュウイスキーやプラムブランデーのコレクションに凝ったこともある。しかし、それはあくまでも外交活動のためであって、酒が好きだからではない。