震災復興の政治経済学 津波被災と原発危機の分離と交錯
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さいとう・まこと●一橋大学大学院経済学研究科教授。専攻はマクロ経済学。1960年名古屋市生まれ。京都大学経済学部卒業。米マサチューセッツ工科大学でPh.D.を取得。住友信託銀行調査部、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学経済学部助教授などを経る。

復興の枠組みを根底から問い直す

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎 

マクロ経済学の大家が、東日本大震災の復興の枠組みを根底から問い直す渾身の一冊だ。極めて衝撃的な内容である。

まず震災復興については、被害額が過大に推計され、過剰な復興費が投入された。被災実態を電子地図情報などのデータを駆使して分析すると、阪神・淡路大震災の何倍もの被害額という当時の認識は、実証的根拠に乏しく誤りだったという。

原発事故については、事故調査報告書などを精査すると、大津波到来後の状況は非常時対応マニュアルで定められた範囲に収まり、想定外とは決していえなかった。状況に応じた手順が順守されず、誤った状況認識に基づく誤った運転操作が、回避可能だったはずの炉心損傷と水素爆発という致命的結果をもたらしたという。