亡命中の英国で殺害されたロシアのリトビネンコ元中佐の妻が、最近発表された捜査報告書を掲げている。日ロ関係にも影響を与えそうだ(AFP=時事)

今年は年初から、国際政治の枠組みに大きな影響を与える出来事が次々と起きている。しかも、新聞やテレビのニュースや解説を丹念にフォローしても事柄の本質を理解できないものが多い。

たとえば、英ロ関係の緊張が安倍政権の対ロシア政策に与える影響だ。1月21日に英国の独立調査委員会が、ロシア連邦保安庁(FSB)のリトビネンコ元中佐(当時43、英国籍)が2006年11月、ロンドンで猛毒の放射性物質ポロニウムによって暗殺された事件にロシアのプーチン大統領が関与していた可能性があるとの報告書を発表した。独立調査委員会は、真相究明を求めるリトビネンコ氏の遺族の要請に基づいて英政府が設置した。委員長は元高等法院判事のロバート・オウエン氏が務めた。この委員会の報告書は公的な性格を帯びている。

〈リトビネンコ氏はプーチン政権を批判して英国に亡命したが、06年11月1日午後、ロンドン市内のホテルで茶を飲んだ後で体調を崩して同月23日、死亡した。尿から猛毒の放射性物質ポロニウムが検出された。/300ページに及ぶ報告書では、1.リトビネンコ氏とホテルで会い、事件後ロシアに帰国した旧ソ連国家保安委員会(KGB)職員ら2人が、殺害する目的で茶にポロニウムを入れて暗殺した、2.2人には個人的にリトビネンコ氏を殺害する目的はなかった、3.殺害はかなり高い可能性でFSBの指示で行われた、4.ロシアは2人の身柄の引き渡しを拒否しており、FSBの暗殺はおそらくパトルシェフ安全保障会議書記とプーチン大統領が承認していた、と結論づけた。/またサセックス大学のドムベイ教授の研究では、ポロニウムは核兵器を製造するロシア国内の2つの閉鎖都市でしか製造されておらず、04年にもチェチェンの反体制指導者などが毒殺されており、ポロニウムを使用できるロシア政府が国家として殺害に関わった可能性が高いとしている。/殺害の動機としては、プーチン氏が権力を掌握する契機となった1999年のモスクワのアパート爆破事件がFSBの自作自演であったことなど、プーチン氏の「アキレス腱(けん)」を明らかにしたのがリトビネンコ氏だったことを挙げた。〉(1月21日「産経ニュース」)