“恕”という言葉がある。『論語』巻第八「衛霊公第十五」に出てくる。子貢という弟子が師の孔子に聞いた。

「生涯行うべきことを一文字で表せましょうか」。孔子は答えた。「それは恕だよ」。恕というのは「いつも相手の立場に立って物を考える、優しさと思いやり」のことだ。子貢は納得し、諸国遊説のモチーフにこれを掲げた。

いつの頃からか、いろいろな演題をもらっても私は、話を「恕」で締めくくる。経営者なら「客の立場になって」、リーダーなら「部下の立場になって」。経営者やリーダーへの適用だけでなく、この一文字は人間の生活全般に活用できる。

東京都は東京府と東京市が合併して、1943年に発足した。このうち東京市は32年にそれまで15区だったのを、5郡82町村を20区にして、合わせて35区になった(戦後、23区に編成替え)。私が住む目黒区も32年より前は荏原(え ばら)郡であり、かなり成長するまでは田畑と森林が多かった。そのため旧15区の住民たちから「本当の東京ってのは、JR山手線の内だけさ」と威張られた。