15歳でプロ棋士となってから、羽生善治氏はずっと棋界の先頭を走り続けている。タイトル獲得数94は歴代1位。プロ入り後の通算勝率は7割を超す。第一線で戦ううえでの気構え、コンピュータの将棋に対する見解とは。

はぶ・よしはる●1970年埼玉県生まれ。85年に史上3人目の中学生プロ棋士としてデビュー。96年に前人未到の将棋界全7タイトルを独占。現在は名人、王位、王座、棋聖の4冠を保持。(撮影:梅谷秀司)

──プロ棋士として30年。対局で高いモチベーションを保つ秘訣は。

オリンピックのように4年に一度であれば、その瞬間にピークを持っていけるが、それを何十年も続けるのは難しい。年間50~60局もやっていると、やる気が出ないときもある。それをとがめるのではなく「そうしたときもある」と、自分の中で受け入れるようにしている。

人の気持ちは一日の中でも変化するものだ。時間が解決したり、小さなきっかけで変わったり。リスクを取って冒険的なことをすれば、必然的に緊張感が生まれて、やる気が出ることもある。

──タイトル戦のような大舞台で、リスクの高い手を指している印象があります。

大胆なことをすると目立つので、そういうふうに見えているのかもしれない。ただ実際は、毎回大きなリスクを取っているわけではなく、時に非常に手堅く、保守的に指している。

机上の研究には限界があって、実戦でやってみて初めて、良しあしやポイントがわかることもある。リスクは時間軸によって変化する。今はリスクが高いように見えても、10年後にはいちばん安全なやり方だったりする。

──年を重ねて棋士としての戦い方は変わってきたのでしょうか。