緊縮策という病:「危険な思想」の歴史
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Mark Blyth●米ブラウン大学政治学部教授。国際政治経済学者。1967年スコットランドのダンディー生まれ。米コロンビア大学大学院で博士号を取得後、米ジョンズ・ホプキンス大学を経て、2005年から現職。共著に『構成主義的政治理論と比較政治』がある。

金融危機に2様の立場の政策を薦める

評者 北海道大学大学院教授 橋本 努

リーマンショック後の世界は総じて「緊縮」政策の潮流にのまれたが、いずれも誤っていたとみる。歴史的に振り返っても、金本位制へ復帰するために採られた緊縮策はことごとく失敗した。欧州の単一通貨制度(ユーロ)は加盟国に緊縮財政を迫ったがゆえに、ギリシャ問題などをかえって悪化させてしまっている。総じて「緊縮策」は、平和や繁栄や債務削減をもたらすのに無益であった、というのが本書の主張である。

著者によれば、現在の混乱は過剰な政府支出によるのではない。財政赤字は景気循環に付きものであって、趨勢的とはいえない。また財政赤字は民間の債務と比べれば微々たる額にすぎないのであり、混乱の原因ではない。財政赤字を続ければ通貨が売られるのではないかと危惧する向きもあるが、米ドルはそれでも安泰。米政府は莫大な債務を抱えても、ドルは依然として世界の準備通貨としての地位を失っていないと指摘する。