沈まぬアメリカ 拡散するソフト・パワーとその真価
沈まぬアメリカ 拡散するソフト・パワーとその真価(新潮社/208ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

わたなべ・やすし●慶應義塾大学環境情報学部教授。1967年生まれ。専攻は文化人類学、文化政策論、米国研究。上智大学外国語学部卒業。米ハーバード大学大学院修了、Ph.D.(社会人類学)取得。著書に『アフター・アメリカ』『アメリカン・コミュニティ』『文化と外交』など。

 

代替できない汎用性や可能性、普遍性を生み出す

評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫

米国の衰退、貧困、格差といった指摘や議論が絶えない。とはいえ論者の多くは、米国によって利益や社会的な地位を得ている人である。

中国の台頭、中東の混迷と欧州連合(EU)の困難が同時進行し、冷戦期に代わる新たな秩序をたしかに世界は見いだしていない。米国の相対的な「衰退」は誰にもわかっている。しかし本書が指摘するように、毎年70万人の移民を受け入れ、7万人の難民を認定し、90万人を超える留学生が世界から押し寄せ、移民の希望者は他国と比べて圧倒的に米国を選ぶ。

ジョセフ・ナイ氏を中心に、米国のパワーは軍事力(ハード・パワー)よりも「ソフト・パワー」にあることはかねてから指摘されてきたが、たしかに、ロシアや中国がいかに米国と並び立つ覇権を狙おうと、世界から相手にされないのは、本書が語る「時代や地域を越えて」「世界に残す価値や制度」を持たないからである。