外注範囲が広がり建設現場が空洞化した

やしろ・ともなり●1985年東京大学大学院博士課程修了。武蔵工業大学助教授、東京大学大学院助教授などを経て2001年から現職。

問題の背景には、建設現場の空洞化がある。以前、ゼネコンの社員は自ら図面を引き、技術計算をした。先輩社員と現場に出て、OJT(職場内訓練)で仕事を覚えた。しかしバブル崩壊後、社員数が減り外注範囲が広がった。外注先が成長し、部材の設計から施工までを一括して引き受ける産業構造変化が起きたが、一方で外注先のエラーに対する歯止めが利きづらくなった。

かつては業務を体で覚えていれば、「ここは外せない」という勘所があった。杭打ちや構造体は、まさに外せない部分。対応を誤ればどれだけのリスクがあると認識されていたか。そのリスクを外注先(下請け)だけが認識し、発注者や元請けと共有していなかった可能性もある。

経験知ある技術者が消える

ラグビーのレフェリーの間に「ファースト・テンミニッツ」という戒めがある。レフェリーが最初の10分間できっちり笛を吹かないと、ゲームが運営できなくなる。それと同じように、業務にきちんと優先順位をつけて、重要な現場作業には管理技術者が立ち会うようにする。報告業務にはウェブカメラなどITを活用して、作業を増やさない工夫も必要だ。