日本経済はなぜ新陳代謝力に乏しいのか。事業構造を一変させるという自己代謝を果たした富士フイルムホールディングスの古森重隆会長・CEOと、上場企業から中小企業まで多くの企業の再建を手掛けた経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦CEOが、代謝力を失った企業と社会の行く末を語り合った。

経営共創基盤CEO 冨山和彦(左)富士フイルムホールディングス会長・CEO 古森重隆(右)(撮影:風間仁一郎)

──ゾンビ企業が、中小にまで増殖しているといわれます。

冨山 私が産業再生機構にいた当時、日本には巨大なゾンビ企業を支える仕組みがありました。カネボウ問題はその典型。繊維事業が傾く中、化粧品に軸足を移す自己代謝能力がなく、結果的に深刻な粉飾事件を起こした。当時の大企業には既存の事業ポートフォリオを維持することをよしとする風潮があり、銀行も多分にそれを支えていました。

ただ、大企業はこの10~15年で大きく変わった。今問題なのは中小企業。中小企業金融円滑化法や信用保証制度など、ありとあらゆる延命策がある。雇用調整助成金の不正受給問題がときどき起こるが、その中には延命目的で助成金を使っているケースが少なくない。また労働基準監督署は大企業は厳しく摘発するけれど、中小には目をつぶる。まじめに摘発すると潰れちゃうので。

中小を潰さないのは、それがある種の社会政策だったから。中小は失業者の受け皿でした。ですから中小は、生産性が低いほうがむしろよかった。生産性向上のための努力はディスカレッジされてきたし、中小同士でも低賃金で長時間働かせるブラック競争をする結果になった。