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“悲劇の国家"シリア なぜ戦火に見舞われる

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アサド政権が国土全体の支配を放棄する一方、反政府側は武装化していった

シリア国内では内戦状態が続いている。アサド政権側に攻撃されて逃げ惑う人々(ロイター/アフロ)

「アラブ世界は独裁者でないと治められない」という通念がかつてあった。しかし、2011年の「アラブの春」で強権支配の恐怖のよろいが剥ぎ取られると、「アラブ世界は独裁者でも治められない」場所になる。

シリアのアサド政権は国土全体の支配を放棄。宗派やコネクション、階層でまとまり、反対勢力への大規模な空爆や砲撃を繰り返して、生き延びる戦略しかなかった。反政府抗議行動への軍事的攻撃が繰り返されるうち、反政府抗議行動側も武装化していく。中央政府の統治が弱体化するのに応じて、覆い隠されていた宗派や民族への帰属意識が表面化。人々は血縁や出自に基づく紐帯に頼り、身の安全を確保し、宗派・民族単位の民兵集団化が進んだ。

「イスラーム国(IS)」は、シリアで覇を競う、無数の民兵集団のうちの一つだ。それがシリアやアラブ世界の枠を超え、イスラーム世界全体からジハード(聖戦)戦士を集める超国家的主体となる。シリアで戦闘経験を積んだジハード戦士が、それぞれ生まれ育った国に帰りテロを行う帰還兵問題によって、シリアの内戦の混乱を近隣諸国や欧米にまで及ぼす、脅威の発信源にもなった。

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