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『気仙沼ニッティング物語』『「歴史認識」とは何か』 『〈日本的なもの〉とは何か』『発信力の育てかた』

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気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社
気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社(新潮社/224ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
みたらい・たまこ●気仙沼ニッティング代表取締役。1985年生まれ。東京大学経済学部を卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ブータン政府の首相フェローを経て、2012年に気仙沼ニッティングを立ち上げ、13年から現職。著書に『ブータン、これでいいのだ』。

地域社会にとけ込み 100年企業目指す気概

評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫

地域で主婦を集め、「いいものを編む会社」を起業し、1年で黒字になった会社の物語である。

著者はマッキンゼーのコンサルタントから、ブータン政府の首相フェローを経て、大震災後の東北に入り、気仙沼で「仕事をつくり出し」生活の循環を取り戻す営みに取り組み、そして見事に成功させつつある。

被災地の人々が、支援に対して「すみません」「ありがとうございました」と頭を下げる日々から決別し、働き、暮らし、そして納税して社会生活を送るという日常を形成したこの物語は、単に「大災害からの復活」の「よい話」ということではなく、地域社会で仕事をつくり出すことの具体性、ネットワークの重要性、ブランドをつくるプロセス、そして、そもそも健全な社会とはどういうものなのかを、実に明瞭に描いている。

著者は親交のあった糸井重里氏の提案で、漁師町では編み物が身近であることに着目しプロジェクトをスタートさせた。まず編み物作家、デザイナーなどと、かつて手編み品の産地だった、アイルランドの一地域(アラン諸島)を訪れる。そこもまた気仙沼と同様に漁師町だった。そしてその町の地場産業としての編み物の盛衰を調べる。

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