車の吸音材、防じんマスク、キッチンたわし……。これらの製品の共通点がわかるだろうか。いずれも不織(しょく)布の技術を応用していること、そして同一の企業が作り出した製品であることだ。

米スリーエム。「ポスト・イット」やセロハンテープなどを開発した、イノベーション企業として知られる。2014年度の売上高は318億ドル(約3.8兆円)で、NYダウ工業株30にも採用される巨大企業だ。日本法人は昨年、住友電気工業との合併を解消し、米本社の全額出資子会社となった。

全体では巨大だが、その実は“中小企業”の集まりだ。同社には30の事業部があり、国別に分ければ事業の規模はさらに小さくなる。製品数は5.5万アイテム。日本では自動車関連など産業用製品が中心だが、虫歯治療の際に歯にかぶせる白い材料やバスのラッピング材、道路の誘導表示板まで、実に幅広い。

神奈川県相模原市にある同社のカスタマーテクニカルセンターには、毎年約1000の取引企業から5000人近くが訪れる。ここは製品を展示するだけでなく、顧客の「課題」を発見する場だ。

カスタマーテクニカルセンター。1997年開業、日本に初めて設置された

担当者はセンター内を案内しながら、顧客がふっと漏らす課題に着目する。その際にシーズとなるのが、同社が培ってきた46に及ぶ技術基盤だ。46の技術基盤は材料、プロセス、機能、アプリケーションの4分野に分けられ、これらの技術を横展開する。冒頭の製品群も、不織布という材料に研磨や接着、量産技術などを組み合わせて作り出された。

上司は部下のアイデアを否定しない