【今週の眼】阿部 彩 首都大学東京教授
あべ・あや●米マサチューセッツ工科大学(MIT)卒。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学 院博士。国立社会保障・人口問題研究所などを経て、2015年4月から現職。著書に『子どもの貧困』『子どもの貧困2. 』(岩波新書)、『生活保護の経済分析』(東京大学出版会)など。(撮影:今井康一)

「下流老人」という言葉が流行している。

6月に藤田孝典氏の『下流老人』(朝日新書)が発売されたのを皮切りに、同月末に新幹線内で焼身自殺をした高齢男性の事件などもあって、週刊誌を中心に「あなたも下流老人に?!」といったトーンの記事が目立つようになった。くしくも、この原稿の執筆中に「下流老人:貧困、病気、孤立…老後転落に備えよ」という特集が組まれた本誌最新号が届いた。

貧困の高齢者は、増えているのであろうか? 

長期的に見ると、高齢者の貧困率は明らかに減少している。1985年に20.8%であった65歳以上の高齢男性の貧困率は2012年には15.1%に減少した。同期間に、20~64歳の勤労世代男性の貧困率が9.6%から13.6%に上昇していることを見ると、高齢男性の貧困率の減少は劇的ともいえる。

一方、高齢女性の貧困率は男性ほど改善しておらず、24.4%から22.1%に減少したのみである。しかし、決して増えてはいない。最も貧困率が高い一人暮らしの高齢者を見ても、85年から13年にかけて、男性は54.5%から29.3%、女性は70.1%から44.6%に減少している。