(イラスト:三澤祐子)

「多くの矛盾を抱えたままの上場であり、合理的には説明できないことばかりだ」。ある市場関係者が声を潜めてこう話す。

1987年のNTT株以来の大型IPO(新規株式公開)。久しぶりの目玉案件とあって、政府だけでなく証券業界でも「失敗させたくない」との意向が強い。「セルサイドから出る日本郵政に関するリポートは賛美歌のオンパレード」(市場関係者)。そうしたムードを察知してか、バイサイドの口も一様に重い。

矛盾の筆頭は、日本郵政の利益が、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の両社から得ている収入に大きく依存していることだ。つまり、両社株の放出は日本郵政の価値毀損につながりかねない。

郵政民営化法で、郵便だけでなく金融・保険も含んだユニバーサルサービスの維持が義務づけられていることも矛盾をもたらす。地域のネットワークを維持するには膨大なコストがかかるからだ。

「最も厄介な問題」(市場関係者)とされるのは、ゆうちょとかんぽが日本郵便に支払う代理業務手数料である。日本郵便の郵便・物流事業は赤字。ゆうちょとかんぽからの手数料収入で穴埋めされているのが現状だ。手数料を下げればゆうちょとかんぽの収益向上に寄与するが、日本郵便の経営を揺るがす可能性がある。しかも、手数料はいったい高いのか安いのか。日本郵政グループの経営分析や企業価値評価などを行う京都大学大学院の藤井秀樹教授は、「積算の根拠などに関する十分な情報開示が必要」と指摘する。上場後は投資家に対する説明責任が問われることになりそうだ。