過疎地で長年、人々の心の支えとなってきた寺が一つ、また一つと消えている。全国に約1万0300カ寺を擁する日本屈指の伝統仏教教団、浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺)では1989年から2013年3月末までに232カ寺が解散か合併で減った。

島根県石見(いわみ)地方は「石州(せきしゅう)門徒」という言葉があるほど古くから同派の信仰が篤(あつ)い土地柄だが、今や約400カ寺のうち約80カ寺までが無住寺だ。なぜ、寺は消えていくのか。過疎地寺院の厳しい現実を現地で取材した。

88年12月に放映されたNHKテレビの報道番組「寺が消える~中国山地・ふるさとからの報告~」は、いち早く石見地方の過疎地寺院の窮状に注目し、廃寺が決まった寺から本尊が運び出される様子などを生々しい映像で伝えて仏教界に大きな衝撃を与えた。

舞台は中国山地の真っただ中、江(ごう)の川の中流域にあって邑南(おおなん)町、川本町、美郷町から成る島根県邑智(おおち)郡。放映以来四半世紀の時が流れ、過疎化に拍車がかかった今、邑智郡の寺々はどうなっているのか。雑誌『月刊住職』に昨年記事をまとめた。今ルポはそのダイジェストでもある。