ある流通業の幹部は今の個人消費動向をこう表現する。「蜃気楼消費」。光の異常屈折で、地上の物体が浮き上がって見えたり、遠くの物体が近くに見えたりするのが蜃気楼である。

個人消費に関する各指標は回復傾向を示し始めたが、関連業界の現場には手放しで喜んでいる様子はない。「本当に消費は回復しているのか。実態がわからない」。そんな手応えの小ささに困惑している姿も見られる。それでは、消費の現場を惑わす蜃気楼はどうして起きてしまったのだろうか。

実質賃金の改善鈍く 回復まだら模様に

内閣府が発表する消費総合指数はこのところ回復トレンドを強めている(図表1)。総務省が6月下旬に発表した5月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は前年同月に比べ4.8%増加した(図表2)。前年同月を上回るのは1年2カ月ぶりのことだ。

[図表1]
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[図表2]
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ただ、昨年5月の支出は消費増税の影響で2011年3月以来の大きな落ち込みとなっていたため、4.8%の高い伸びはその反動高ともいえる。物価上昇分を除く実質賃金は低迷したままだ。実質賃金のマイナスが続き、実質可処分所得の改善幅も小さい。それが消費動向をまだら模様にさせている。円安を背景とした「過去最高レベルの食品価格の高騰」(エコノミスト)の影響も加わっている。