経済の大転換と日本銀行 (シリーズ 現代経済の展望)
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おきな・くにお●京都大学公共政策大学院教授。専門は金融論。1951年生まれ。東京大学経済学部卒業。米シカゴ大学でPh.D.を取得。筑波大学助教授、日本銀行調査統計局企画調査課長、企画室参事、金融研究所長などを歴任。著書に『期待と投機の経済分析』など。

危機回避と物価安定が両立できないおそれ

評者 BNPパリバ証券 経済調査本部長 河野龍太郎

アベノミクスの大誤算は、大幅円安にもかかわらず、輸出が増えなかったことだ。一方で輸入物価は上昇し、消費増税でダメージを被った家計に追い討ちをかけた。後遺症は今も続く。

大規模な2012年度補正予算の効果で、14年年初には完全雇用に達していたため、もし円安誘導で輸出が増加すれば、人手不足に直面する非製造業の雇用を奪うおそれもあった。これらの理由から評者は近年の円安誘導には否定的だが、本書はより長期的視点から、リフレ政策の問題点をあぶり出す。デフレを諸悪の根源としたため、喫緊の課題である人口問題への対応策がおろそかになったと嘆く。全く同感だ。

生産年齢人口の減少が潜在成長率を低下させる点は多くの人が認識するが、問題はそれだけではない。85歳以上の超高齢者が激増する30年代以降、要介護者が急増し、介護離職で労働力の一段の減少が懸念される。簡単な試算で、さらに1割を超える労働者が介護に割り当てられ、潜在成長率が一段と低下するリスクを説得的に示す。