甲高い声と独特のなまり。テレビの中からお茶の間に向かって、毎日商品を紹介する。本人はテレビ出演時の自分を「素」であり、「個性」と言うが、視聴者に愛される話し方、印象を十分すぎるほど心得ている。この男の声を聞いたことのない人はおそらく全国にいない。ジャパネットたかた(ジャパネット)前社長の高田明である。

「いつかはけじめをつけないといけないから」。今年1月に66歳で社長を退き、長男の旭人にその座を譲った。まだテレビ出演は続けているが、近い将来にはそこからも身を引く決断をしている。二人三脚でジャパネットを支えてきた妻も「もうよかっちゃなかと」と背中を押した。

長崎県佐世保市。商業施設が立ち並ぶJR佐世保駅から少し離れると、歳月を経た木造家屋が静かにたたずむ地方都市の風景が広がる。その奥にそびえ立っているのが、持ち株会社のジャパネットホールディングスと中核事業会社のジャパネットたかたの本社だ。

おそらく市内では指折りの巨大社屋であるはずなのだが、その内部は静寂に包まれている。数年前、東京・六本木の新拠点へ本社機能の一部を移動させたためだ。たとえば、バイヤーのほとんどが佐世保から東京へ移動したため、メーカーとの商談も佐世保では行われない。取引先の出入りも東京へシフトしたのだ。