「まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった」

彼はそう言って苦笑いを浮かべた。キューバ革命の英雄チェ・ゲバラの顔がプリントされた軍服風ジャケットをまとって現れた田中和夫さん(仮名・51)。奇抜なファッションからは想像しづらいが、彼はかつて誰もがうらやむエリートビジネスマンだった。

大学卒業後にコンサルティング会社に就職。その後は外資系IT企業を渡り歩いてキャリアアップを重ねた。年収は一時1200万円に上り、充実した生活を謳歌していた。

だが現在の年収は約300万円。生活保護の申請に足を運んだこともある。

順風満帆だった人生の歯車が狂い始めたのは、2005年に大手通信系企業に転職したときからだった。スマートフォンの新製品発売に向けた連日の激務がたたり、田中さんは倒れた。病名は一過性脳虚血発作。脳梗塞の前兆といわれる病気だ。

3カ月休職し、ようやく快方に向かったので職場に復帰した。だが、戻った田中さんを待ち受けていたのは上司のパワーハラスメントだった。胸ぐらをつかまれ、かけていた眼鏡を壊されたこともある。

「会社に復帰した途端、対応が冷たくなった。いつ倒れるかわからない人に年収1000万円ものコストをかけたくないから、早く辞めさせたいと思ったのではないか」。田中さんはそう振り返る。

きっかけは親の看護 自分も体調を崩して…