日本経済の構造変化――長期停滞からなぜ抜け出せないのか (シリーズ 現代経済の展望)
日本経済の構造変化――長期停滞からなぜ抜け出せないのか (シリーズ 現代経済の展望)(岩波書店/272ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
すどう・ときひと●獨協大学経済学部教授。1962年生まれ。横浜国立大学博士(学術)。専門はマクロ経済学、金融論、日本経済論。共著に『図説日本の証券市場 2012年版』。
のむら・ひろやす●獨協大学経済学部教授。1970年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専門は財政学、租税論。共著に『証券市場読本』など。

国民純貯蓄の枯渇は増税で解決できない

評者 NPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎 

アベノミクスの当初のシナリオは次のようなものだったはずだ。大規模な追加財政で総需要を刺激する間に、積極金融緩和に伴う円安で輸出回復を図る。その後、成長戦略の効果も加わり、業績の改善された企業が設備投資を増やし、家計にも恩恵が及び、個人消費が回復する。

しかし、うまくいったのは財政で高成長となった2013年だけだ。14年は超円安にもかかわらず輸出は増えず、むしろ消費増税でダメージを受けた家計に輸入物価上昇が追い打ちをかけ、個人消費は大きく悪化した。

本書の分析を読むと政策の失敗の原因が見えてくる。そもそも過去20年の停滞の主因は、経済の6割を占める個人消費の回復の遅れにあり、それは雇用者所得が低迷を続けたためだったという。投資や人件費を抑えた結果、今では大企業の多くは手元資金が潤沢だ。企業から家計に所得が流れていかないことが問題なのであり、いくら金融緩和や円安で企業を優遇しても、消費増にはつながらない。