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作家の歴史の楽しみ方 仏革命はなぜ面白いか 私が伝えたい世界史のキモ 2

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作家、比較文学者 小谷野 敦

こやの・あつし●1962年生まれ。小説と文学者の伝記、比較文学の分野で活躍。小説の近刊として『ヌエのいた家』。『川端康成伝』など著作多数。『聖母のいない国』でサントリー学芸賞。(撮影:今井康一)

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私は、フランス革命が好きだが、ロシア革命にはどうも関心が向かないし、ロシア革命の歴史の本も読んだのだが、ろくに覚えていない。なぜかと考えてみるに、フランス革命は、登場人物のキャラが立っているからである。

ルイ16世、マリー・アントワネット夫妻、ミラボー、ラファイエットからダントン、マラー、ロベスピエールまで、人物が魅力的で、ロベスピエールの失脚までの5年ほどは物語性に富んでいる。同じフランスでもパリ・コミューンとなると、そういう登場人物がいないのである。

歴史の中にはさまざまな逸話がある。戦国時代、石田三成が出世したのは、寺の小僧をしていたときに、羽柴秀吉が鷹狩りの帰りに立ち寄り茶を所望すると、初めはぬるい茶、2杯目を望まれると少し熱い茶、3杯目でもっと熱い茶を出して、秀吉が機知に感心して召し抱えたからといった逸話である。

歴史学者はしばしば、こういう逸話は後世の逸話集などに載っているだけで作り話である、信用できない、として退ける。マリー・アントワネットが飢餓に苦しむパリの市民らを見て、「パンがないならお菓子を食べればいいのに」と言ったというのも、ルソーがさる貴婦人の発言として書いたのが、マリーにこじつけられたものらしい。

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