偏差値重視にメスを

中原英臣 医学博士・新渡戸文化短期大学学長

なかはら・ひでおみ●東京慈恵医科大学卒。専門は遺伝子研究、感染症学。著書に『感染症パニック』(講談社+α文庫)。(撮影:尾形文繁)

僕らの時代は、大学入試に当たって偏差値という概念がなかった。医学部を選んだのは、医師になりたいから。それが普通だった。

今は違う。医師になりたいかなりたくないかは、医学部を選択する理由にはなっていない。偏差値が高いから医学部へ行く、という構造だ。だが偏差値はしょせん、記憶力を測る指標でしかない。だから偏差値重視の受験システムにこそ問題がある。

いちばん困るのは、受験科目に生物を選ばず医学部に入る学生だ。理科2科目が必要なら、得意な物理と化学に絞って受験するのだ。医師になろうという人が、生物の基礎を知らない、興味がないというのはまずい。生き物の観察が好きで、解剖に興味のある人が医師に向いている。

受験システムの弊害が、医師の診療科偏在を引き起こしている。日本の医師数は30万人超と30年前のほぼ倍なのに、産科や小児科で“医師不足”が叫ばれている。

偏差値が高く要領のいい人は、産科のような多忙な診療科は選ばない。当直もなければ、夜呼び出されることもない、楽な診療科を選ぶ。真に医師を目指す人を医学部に入れる仕組みを作らないと、日本の医療はおかしくなる。