難化傾向の続く医学部受験。

ロンドンのターミナル駅、キングス・クロス駅。下を向きながら階段を上る男性の後ろ姿がある。階下には色鮮やかな赤い風船が2個、2本の糸で結ばれ浮いている。そして「キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい」。

今年1月に行われた順天堂大学医学部入試の小論文では、このような問題が出題された。さて、皆さんならどう答えるだろうか。

写真をよく見ると、男の後ろ姿の右手が上がっていることに気づく。記述の方向性としては、「スマートフォンの功罪」だろうか。長いコートを着たこの男は、スマホをいじりながら階段を上っていることが推測される。

近時、電車内や道を歩いている際、スマホの画面にくぎ付けの人が多い。これでは、ある日道端に咲いた小さな花の美しさや、本問でいえば、誰かが心の安らぎにと結んでいった色鮮やかな風船の美しさにも気づかないであろう。われわれは目先の情報を獲得することに奔走し、心のゆとりや、さらに言うならば、人間が本来具有していなければならない大切な何かを忘れてしまっているのではないか。方向性を示されれば簡単に書けそうであるが、試験会場でそこまで思考を巡らせるのは簡単ではない。