赤字の民主主義 ケインズが遺したもの (日経BPクラシックス)
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James M. Buchanan●1919~2013年。米国の経済学者。ケインズ経済学を批判するバージニア学派の中心的存在で、公共選択論を提唱した。1986年にノーベル経済学賞を受賞。
Richard E. Wagner●米ジョージ・メイソン大学教授。米バージニア大学で博士号を取得。米フロリダ州立大学教授などを経る。専門は財政学、公共選択論。

公的債務の膨張抑止には憲法への盛り込みも一案

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

不況期に減税や追加財政で景気循環を均(なら)すことを目的とするケインズ政策。それが持続可能であるには、景気拡大期に増税や歳出削減が必要だ。ケインズも景気循環を通じた予算の均衡を前提にしていた。しかし日本では、景気拡大が始まっても先行きを心配し、引き締めが行われるどころか、景気回復で得られた税収を原資に追加財政が続けられている。公的債務の膨張が止まらないのも無理はない。

ケインズ理論が広がるまで、各国とも均衡財政ルールが財政運営の基本だった。弟子のハロッドは、現実の経済政策が知的エリートによって決定されることをケインズが前提にしていたと批判する。知的エリートが居を構えるケインズの生家の地名にちなんで「ハーベイロードの前提」と揶揄(やゆ)したが、現実の政策は、知的エリートが決定するのではなく、選挙に直面する政治家が選択する。不況期には容易に景気対策が実行されるが、景気拡大期には必要な引き締め策は選択されない。