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EUに見た夢は遠くなりにけり 特別寄稿

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連合体としての欧州はどこから来て、どこへ行くのか。気鋭の学者が展望。

1952年、今のEUの母体に当たるECSC設立を主導したジャン・モネ(手前から3人目)。(Roger-Viollet/アフロ)

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かつてのユーロ危機は経済主導危機、今回は政治主導危機

反EU(欧州連合)のうねりが、ヨーロッパを覆っている。

2009年に起こったユーロ危機が、リーマンショック、ギリシャ債務危機に端を発した経済主導型の危機だったとすれば、今回の危機は政治主導型の危機といえる。ギリシャのシリッツァ(SYRIZA、急進左派連合)、スペインのポデモス、イタリアの五つ星運動、英国の独立党、そしてフランスの国民戦線など、現在のEUの在り方に根本的な疑念を投げかける急進的な右派・左派が、民主的な手続きによって台頭しているのだ。戦後西欧のデモクラシーは、ヨーロッパ統合とともにあった。今や「デモクラシーの危機」と欧州の主要メディアが書き立てる。

「ヨーロッパ統合」は、2度の大戦を踏まえた歴史的和解と域内平和の象徴とみられているが、それは神話である。歴史的に考えると、各国分断と相互不信の中から積み上がってきたものだ。

1952年、ヨーロッパ統合のきっかけとなった欧州6カ国でのECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)は、西ドイツの石炭を「国際共同管理」という建前で獲得したいフランス政府の強い思惑が発端になっていた。ECSC結成を主導し「ヨーロッパ統合の父」とされるフランスの政治家ジャン・モネは当時、自国で日本の傾斜生産方式のような5カ年計画をスタートさせていた。フランスの鉄鋼業を復興・発展させ、この計画を軌道に乗せるためにも、西ドイツの豊富な資源を手中に収めることは不可欠だった。それはまた西ドイツをフランスのパートナーとして取り込み、その強大化を防ぐ一挙両得の策でもあった。西ドイツにとってもECSCは国際社会への復帰という国策であった。

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