古き因習と最先端ビジネスの狭間でうごめく巨大国家を圧倒的筆力で描き出す。

ブータン、チベット、ネパールと書き、インドに至った

インドクリスタル
インドクリスタル(KADOKAWA/角川書店/541ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──インドが舞台です。

これまでブータン、チベット、ネパールを舞台に書いてきた。書くたびに立ち現れるのがインド。ブータンでいえば、外交と軍事はインドに依存しているし、チベットはまさに中国とインドがせめぎ合う所で、今はほとんど中国化された。ネパールも両大国に挟まれ、インドの影響力を強く感じるのが常だった。

──たまたま会った中学同窓生の経験談が執筆を促したとか。

10年ほど前、通っているスポーツジムで、それこそ数十年ぶりに中学校時代の同窓生に会った。黄銅鉱を買うためにインドに出掛けているとかで、そこでの話を聞かされた。鉱山に行く道すがら延々と続くスラム。一方、泊まったのはタタ財閥の造った目もくらむ豪華なホテル。そのすさまじい落差。しかも商売相手がいかに手ごわく、日本人ビジネスマンの常識が通用しないか、と。その瞬間、まじめに取り組んで書きたい小説の題材だと一気に感じた。

──インド事情が詳細です。

インドの元駐在員が中心メンバーの勉強会「インドサロン」に、今年5年目でまだ在籍させてもらっている。ムンバイの総領事だった武藤友治さんが現代インドについて毎回テーマを決めて講義する。

──小説には反政府勢力が登場します。

ピンポイントで先住民がたくさん住んでいる地域に取材に行った。ただし、人質にされて身代金を要求されては困るので、そこまで問題はなさそうな所を探した。

──現地語とおぼしき地名や人名がたくさん出てきます。