「安倍2.0」の復讐戦

逢坂 巌 立教大学兼任講師

おうさか・いわお●1965年生まれ。専門は現代日本政治、政治コミュニケーション。著書に『日本政治とメディア』、共著に『テレビ政治』。(撮影:今井康一)

「安倍晋三2.0」。私は新しいキャラクターに生まれ変わった安倍晋三首相をこう呼んでいます。第2次政権発足から2年が経過しましたが、世論調査の支持率は高止まりしたままです。官邸主導、言い換えれば官邸一強。その裏には新キャラの誕生、そして周到なメディア戦略があると思います。

第1次政権のとき、安倍首相はメディアに総攻撃されて支持率を落としていきました。本人の屈辱感は相当だったはずで、そのリベンジの思いが新キャラとなって結実した。それは首相を支えるスタッフも同じです。前回事務秘書官だった今井尚哉氏は、政務秘書官としてカムバックした。その部下たちもスピーチライターとして官邸を支えている。

NHKとの関係改善には、まず人事を使いました。昨年の新会長の選出には官邸の強い影響力が見えたし、NHK側もそれに応えて首相に近い記者を官邸に配置している。記者起用については産経新聞もそう。逆に朝日新聞は首相に直接電話できる記者は少ないようです。

官邸一強時代では、派閥の長からネタを取ることができません。だから、朝日一紙だけがネタを取れないことが多い。「朝日外し」のような状況といえます。東京新聞もその傾向があって、首相単独インタビューはなかなか取れない。同業の人たちから聞いた話です。ほかでは、読売は味方、毎日やTBSは今後引き寄せたい存在らしい。官邸はメディアに対し、メリハリをつけています。

1次政権のときよりおでこが見えている

昔の政治家は朝日新聞に認められないと始まらないという雰囲気があったが、もう違います。官邸は朝日にはもう伝わらなくてよいと思っている。他紙やテレビ、ネットなどをうまく使えば、国民に伝えたいことは伝えられると思っています。

「安倍2.0」は見た目も違います。自民党の「おぼっちゃん総理」の中でも、安倍首相は元祖KY(空気が読めない)的な存在でした。ぶら下がりインタビューのカメラ目線が「ちょっとキモい」とかさんざんな評判でした。それもリベンジ戦略で修正された。髪型は前回のべたっとした感じから、アップにした感じになりました。

髪型は大事なアイコンです。たとえば、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キムジョンウン)第1書記の髪型の変化を見ていくと、かつての最高指導者、金日成(イルソン)主席の若者時代に似てきたことがわかる。首相のスーツは、年配の人が好むゆったりとしたボックス型から、腰の辺りの感じが細身な服に替わりました。