【今週の眼】阿部 彩 首都大学東京教授
あべ・あや●米マサチューセッツ工科大学(MIT)卒。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学 院博士。国立社会保障・人口問題研究所などを経て、2015年4月から現職。著書に『子どもの貧困』『子どもの貧困2. 』(岩波新書)、『生活保護の経済分析』(東京大学出版会)など。(撮影:今井康一)

生活保護制度における保護基準がまた引き下げとなった。2年前の生活扶助費に続き、今回は住宅扶助特別基準と冬季加算である。

生活扶助は、食費や光熱費などの生活費に充てる費用であり、住宅扶助特別基準は住宅費として給付が認められる限度額、冬季加算は光熱費の増加に対応するために冬季に追加で給付される額である。これらは住んでいる地域によって必要額が異なるため、地域別に細かく額が定められている。

生活保護基準は、憲法25条がすべての国民に保障する「健康で文化的な生活」を営むために最低限必要な額である。すなわち、これは日本社会の「最低限許容範囲内の生活」を規定している。この基準がどんどん引き下げられていることが、社会の「底抜け」を引き起こさないか懸念される。

議論の前に、生活保護制度についておさらいすると、生活保護を受給している人は国民の2%弱。この数値はほかの先進諸国に比べても大幅に低い。しかも、受給者の半数以上が高齢者であり、彼らはそもそも年金制度でカバーされるべきである。また、生活保護制度に使われる財源は4兆円。年金54兆円、医療35兆円に比べると、微々たるものである。4兆円のうち約半分は精神科への長期入院などの医療費である。

生活扶助基準の切り下げにより、2013年から段階的に総額670億円の生活保護費が削減され(15年度分は260億円)、今回の住宅扶助基準の切り下げにより、さらに約190億円が削減となる(15年度は激変緩和措置として30億円の減額にとどめる)。冬季加算も約30億円の減額となる。

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