21世紀の資本
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Thomas Piketty●仏パリ経済学校経済学教授。仏社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。1971年生まれ。EHESS、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学博士号を取得。論文、著書多数。ネット上に世界トップ所得データベース(WTID)を公開。

世襲資本主義の回避に累進的資本課税は有効か

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

昨年から世界的に話題となっている経済書だ。正月に手に取られた読者も多いだろう。極めてショッキングな内容である。

19世紀から20世紀初頭に拡大した経済格差は、戦後、解消に向かったとするクズネッツ教授の有名な実証分析は、長期のトレンドを示したものではなかった。二度の大戦と大恐慌で資本が破壊され、その後、急速な資本蓄積の過程で生じた、戦後の高成長がもたらした格差縮小は一時的な現象だったのであり、1970年代以降、再び格差は世界的に広がっている。相続を通じ、富が集中するため、19世紀末のような世襲資本主義に回帰する可能性があるという。

80年代にレーガンやサッチャーが成長を促すべく、戦中に引き上げられた最高税率を大幅に引き下げたが、結局、格差の再拡大を助長するだけに終わったということなのか。そもそも70年代に停滞が始まったのではなく、戦後の高成長が一時的なものだった、という認識がわれわれに欠けていた。

資本収益率が成長率を上回る状況が続くことで(r>g)、資本の取り分が増え、格差が広がるという。成長率が低迷すれば資本収益率も低下するが、成長率ほどには低下しない。それだけで格差が必ず広がるとは言えないが、労働力が資本に簡単に代替される場合には、資本の取り分が増加を続け、持つ者と持たざる者の格差は広がる。