日本の地方都市の物価・地価の安さは魅力だ。写真は買い物を手に佐賀空港から帰る中国人旅行者(KPS)

中国人の訪日旅行が空前の盛り上がりを見せている。昨年には前年比8割増の240万人が来日した。1月19日から、5年間に何度でも渡航でき1回90日間の滞在が認められる「5年マルチ」ビザが新たに導入され、中国人の日本への関心はさらに高まりそうな勢いだ。

「3年マルチ」が2011年7月から導入されているが、発給要件が厳格で、手続きが煩雑なため件数は当初の予想ほど伸びていない。今回、その発給要件も大きく緩和された(滞在可能日数は90日から30日に短縮)。中国人の日本への旅行を専門に扱う日本之窓国際旅行代表取締役、阿部道広氏は「現在のところ訪日観光のリピーターでも、その都度1次ビザを取得する人が圧倒的多数。今後はマルチビザの比率が急増するのは間違いない」と話す。

中国は高所得層の絶対数が多く、日本から距離的に近いため、マルチビザ発給の増加は大きなインパクトとなる可能性がある。筆者の友人で上海に住む中国人デザイナーは、「日本のどこかにマンションを買い、月に一~二度、妻とそこで過ごそうかと本気で考えている」と話す。円安と中国の物価高騰で、日本の物価は中国の大都市と大差ない。衣料品や耐久消費財は日本のほうが安いものも少なくない。街は清潔で生活環境がよく、治安面でも安心だ。当局によるインターネットの規制もない。

工場経営者である別の友人はランニングが趣味。毎朝、上海の自宅周辺を10キロメートルほど走るほか、年に数回は国内外のマラソン大会に参加している。その彼の悩みは中国の大気汚染と交通マナーの悪さだ。「日本は空気がきれいだし、公園や河川敷など走りやすい所がたくさんある。商売の都合で移住してしまうわけにはいかないが、日本のどこかに家を買って、年に何回か滞在してゆっくり走る時間を作りたい。日本のマラソン大会にも出たい」と意欲的だ。すでにマルチビザを申請し、手始めに5月に北海道・千歳で行われる大会にエントリーしている。