
千葉の三井化学エチレンプラント。足元の稼働率は9割を超す
プラスチックや合成繊維、塗料などの主原料となるエチレン。その国内プラントはかねてから設備過剰が指摘され、この1~2年で一部閉鎖など設備の集約・再編を決める企業が相次いだ。
昨年5月に三菱化学が鹿島のプラント1基を停止。住友化学は今年5月に千葉のプラントを停止する。旭化成も水島で2016年の能力削減を決めており、13年に年間721万トンあった国内エチレン設備の生産能力は608万トンにまで減る。
能力削減の背景にあるのは、国内石油化学産業の高コスト構造だ。国内の石化産業は原油由来のナフサからエチレンを製造しているが、米国では安価なシェールガスを原料とする巨大なエチレンプラント新設が相次ぎ、将来的にはアジア市場にもシェールガス由来のエチレンが流入する見込みだ。
[図表1]

そうした安価なエチレンとの競合で輸出が難しくなれば、国内エチレン設備の稼働率は一段と下がり、経営の大きな重荷になる。このため、危機感を募らせた大手が先陣を切って国内設備削減に踏み切り、経済産業省も業界全体にさらなる削減を促している。
ところがここにきて、石化業界の設備削減の機運は急激に薄れつつある。円安進展により、自動車など輸出産業中心に国内需要が上向いているからだ。昨年12月の国内エチレン設備の実質稼働率は95.7%にまで上昇した。