イラクとシリアの周辺領域を支配した「イスラーム国」が、日本人人質1名の殺害を発表、もう1名をなおも拘束し、ヨルダンで獄中にある著名な自爆テロ未遂犯の釈放を要求している。それに先立っては、フランス・パリで風刺新聞シャルリー・エブド紙に男たちが押し入り、風刺画家や編集者などを冷酷に殺害。これに立ち向かうフランス市民は、宗教権威の支配に対する批判精神の自由を確認する大規模なデモで集った。多数の少女を誘拐して奴隷にして売ると表明するナイジェリア北部のボコ・ハラムなど、世界各地でイスラーム主義過激派組織の行動が波紋を広げる。

いったい何が起こっているのだろうか。いたずらに現象に惑わされず、こういった運動が現れてくる背後にあるメカニズムを理解すれば、先の見通しも立つ。

日本人人質を取り、身代金2億ドルを要求したイスラーム国の兵士(時事)

筆者は、2億ドルを要求した日本人人質・脅迫ビデオが公開された1月20日に『イスラーム国の衝撃』を刊行した。偶然だが、帯にあしらっていた写真は、「イスラーム国」の悪名高い処刑人「ジハーディー・ジョン」と呼ばれる男。ロンドンの移民街に育った中東系英国人とされる。これまで欧米人人質の殺害予告と殺害映像に多く登場し、黒覆面をして左手にナイフを握り、欧米諸国を挑発・威嚇し続けてきた。この男が日本人人質2人の身代金要求ビデオにも登場した。裏表紙側の帯を見ると、「残虐な『公開処刑』には狙いがある!」とでかでかと赤で書き込まれている。これらの広告用の写真や惹句は編集者が本書の内容からセンセーショナルな部分を抜き出して作ったものだが、結果的に発売日に勃発した事件そのものを描いているように見えたのか、多くの書店で売り切れ続出となった。