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深刻な経済学の意見対立 その根深~い理由 [INTERVIEW] 哲学者が見たピケティ

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竹田青嗣 早稲田大学教授

経済学界は、考え方の違ういくつかのグループに分裂している。深刻な学派対立が起きる根源的な背景を、哲学者の竹田青嗣・早稲田大学教授が語る。

たけだ・せいじ●1947年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。明治学院大学教授などを経て、2005年から現職。『フッサール「現象学の理念」』など著書多数。

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──ピケティは「経済学は『経済科学』と呼ばれ、空虚な問題の因果関係について科学的な証明に全力を注いでいる」と批判しています。

現代の経済学は、資本主義の進んできた道を後付けで理論化することしかできていない。どうしたら調和的に成長できるかの答えはまったく出ていない。自然科学ならこの場合はこうなると予測できるが、高度な数学や統計を駆使して自然科学になぞらえる精密性を標榜しているのに、経済学はそれができていない。

もちろんそれは、人間の意識と無意識のように猛烈に複雑な要素が関係し、わかることは氷山の一角だからだが、実は同様の矛盾は政治学や歴史学、心理学などほぼすべての人文科学や社会科学で起きている。

──経済学だけの話ではないと。

これらの人文科学も経済学と同様、自然科学と同じ実証主義を基礎方法としている。自然科学の精密な方法を応用したはずなのに、実際にはあらゆる学問でつねに二つか三つの学派が対立している。特定の社会的勢力や階層の利害を各派が代弁する形で、自然科学のように普遍的な理論に統合されることがない。時にはほかの学派を無視して、自分の理論だけを推し進めることもある。

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