(撮影:今井康一)

「黒田投手、われらカープファンに最高のお年玉をありがとう」──。昨年12月末、米ニューヨーク・ヤンキースの黒田博樹投手が20億円のオファーを断って広島東洋カープに復帰するというニュースに接して、東京外国語大学で教鞭をとるモハメド・オマル・アブディンさん(36)は驚喜。感動のメッセージをツイッターで発信した。

アブディンさんはアフリカ・スーダンから20歳で来日。人生の半分近くを日本で過ごしてきた彼が、日本のプロ野球にかける思いの強さは尋常ではない。

実はアブディンさんは視覚障害者だ。来日早々で右も左もわからなかった頃、ルールも知らないプロ野球のラジオ中継を徹底的に聴くことで日本語を身に付けたのだ。

[図表1]
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当時はスーダンの政情が悪化し、僕が通う大学も長期間閉鎖されていた。未来が明るいとも思えず、たまたま留学の話を耳にして応募したら合格してしまった。ま、若気の至りでしたね(笑)。

欧米と違い、日本との間には植民地支配の歴史的なしがらみがなかったのも大きい。日本についての知識といえば電化製品や自動車、それに広島と長崎に原爆が落とされた話くらいだった。もともとスーダンを含めてイスラム圏では日本のイメージはいい。イラク戦争以降、日本は結局米国と一体だと見なされて少しずつ冷めてきていますが……。

来日当初はコミュニケーションを取るのに必死だった。ただ、日本人は「日本語は特殊で難しいでしょう」と言いたがるけど、ほかの言葉を知らないくせによく言うよと思う。ダジャレでも朝飯前ですよ。スーダンで話されているアラビア語のほうが数段難しい。

現代の物差しで近代史は語れない