特定の立場の本に偏った売り場にしないよう書店は苦心する

2014年の国内の書籍・雑誌の売り上げはおよそ1兆6000億円で、前年より800億円減少した。1997年に前年割れに転じて以来、最大の落ち込みだ。

消費税率引き上げに直撃された格好だが、そんな逆風下の出版業界で例外的に活況を呈した分野がある。韓国や中国をその民族性にまで踏み込んで批判する、嫌韓・嫌中本といわれる書籍群だ。

「特に13年12月に発売された『呆韓論』(室谷克実著、産経セレクト)が30万部近く売れたことは衝撃的だった」と出版流通大手の社員は振り返る。同書は14年の新書で売れ行きトップだった。

こうした嫌韓・嫌中本は誰が買っているのだろうか。

『呆韓論』と同じく14年のベストセラーとなった嫌韓本に、匿名の韓国人ブロガーが書いたとされる『韓国人による恥韓論』(シンシアリー著、扶桑社新書)がある。こちらは14年5月発売で20万部だ。

この2冊の購入者データを見ると、50歳以上の男性、30~49歳の男性が主体で似通った構成だ(図表1)。

[図表1]
拡大する

『呆韓論』と同じ室谷氏の著作『悪韓論』(新潮新書、13年4月刊行)でも同様だと、新潮社「新潮新書」編集長の後藤裕二氏は語る。「購入者はまさに新書の読者層で、ネット上の得体の知れない人々ではなく、ごく普通の人たちです」。

中高年が主体だというのは、内閣府による「外交に関する世論調査」を見てもうなずける(図表2)。中国に関しては50代以上、韓国に対しては60代以上で「親しみを感じない」と答える人の割合が顕著に高い。もともと読書習慣がある層と、中韓両国に対して拒否感が強い層がぴったり重なったところに嫌韓・嫌中本のブームが生まれたのだ。