キリンホールディングス(HD)のプライドが傷ついている。2014年度は決算の主要数値ばかりか、株式の時価総額でも業界トップの座を明け渡した。「独り負け」に直面しているのである。

年度末が迫る昨年秋、社長の三宅占二はトップ交代を決断する。「これなら次に渡せるだろう」。底の見えない販売不振に改善のメドが立ってきたのだ。その数日後、三宅はHD社長室に次期経営トップを呼び出す。国内事業を率いるキリンビール社長の磯崎功典である。

経営企画部長など要職を歴任してきた磯崎は、堅実でスマートなキリンの社風を体現するような人材だ。キリンビール社長就任後は全国の社員たちと30回以上の「対話集会」を開いた。磯崎がそこで見つけた病巣。それはキリンが「戦わない集団」に陥っていたことだった。

一昔前、キリンのビールシェアは60%を超えていた。もはや営業力強化など不要な時代である。「現場はそのときと同じ状態にあるように見えた」。磯崎の使命は簡単にいえば、「国内の姿をピカピカにすること」。国内復活を最重要課題として、経営資源を集中させる。

その強力な実行役が磯崎の後任としてキリンビール社長に就任する布施孝之である。布施はかつて大阪支社長から、経営不振にあったグループの小岩井乳業の社長に出向した。冷遇にも見える人事だったが、小岩井再生に成功した布施は昨年、販売部門のキリンビールマーケティング社長として経営中枢に抜擢される。すると、1年も経たぬうちに国内事業トップへの昇格を果たした。