(撮影:梅谷秀司)

伊東孝紳社長が600万台という台数目標を掲げたことが悪かったという意見もあるが、私はそうは思わない。リーマンショックの経験から米国一本足ではダメだと、新興国市場への進出を図ったことも間違いではない。インドではトヨタ自動車が失敗しているが、ホンダはマルチ・スズキに対抗できている。世界6極体制がプラスに働いている。

だが、低価格帯ではマルチ・スズキと戦い、高価格帯では「レクサス」と戦う。2輪車、エンジン、ハイブリッドに燃料電池車、飛行機にロボット。手を広げすぎではないか。

ホンダは本社と技術研究所とに機能が分かれている。それぞれが世界6地域にあるわけで、横串がうまく通っていないのではないだろうか。しかも、研究所の独立性が保たれているのかという疑問も残る。日本では、栃木の研究所の個性が薄れてきている。面白いものが出てこなくなった原因かもしれない。

軽自動車の「N」シリーズは、工場がある鈴鹿に研究開発を移して一体化し成功したが、150万円前後するNシリーズは新興国で売れない。モデルによっては独フォルクスワーゲンの「アップ」より高く、典型的なガラパゴス軽になっている。

スズキが昨年末に出した新型「アルト」の車両重量は610キログラム。これは驚異的な数字。ダイハツ工業は大分の新工場でラインの長さが従来の半分という無駄のない生産システムを構築した。このように世界で戦える軽を本気で作ろうとしているスズキやダイハツに対してホンダの軽には世界的な戦略性が見えない。

ホンダでは、生産技術は別会社のホンダエンジニアリングが担う形になっている。図面を描くのは研究所、生産技術はエンジニアリング、工場は青山(本社)の管轄……。モノづくりの責任が分散されてしまっているのも気になるところだ。