FX業界全体で預かり資産は増加しているが、コスト競争は厳しさを増している(時事)

7年ぶりに1ドル=120円台まで円安が進み、足元で個人のFX(外国為替証拠金取引)が活況を呈している。円安・ドル高の進行は、業績が停滞していたFX業者にとっても、“干天の慈雨”になった。

2012年8月、1ドル=70円台後半の円高だった頃、FXの公設市場である「くりっく365」の取引高は、39万枚まで縮小していた。しかし、アベノミクスが始まり、13年4月に日本銀行の異次元金融緩和が発動されると、取引高は急膨張。同年6月には273万枚まで膨れ上がった(図表1)。

[図表1]
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その後、ドル/円相場がボックス圏で推移するようになると、出来高は漸減。14年6月には40万枚とアベノミクス前の水準まで戻ってしまった。しかし、同年10月末に金融緩和の第2弾が発表されると息を吹き返し、11月には203万枚まで回復している。

ただし、取引の活発化は、FX業者に“副作用”をもたらす。しばらく沈静化していたコスト競争が、足元で再び激化しつつあるのだ。

為替取引の際にかかる主なコストは買いレート、売りレートの差額であるスプレッドだ。このスプレッドが狭いほど、投資家は取引コストを抑制することができる。

FX業者にとっては、スプレッドは利益の源泉である。しかし、顧客を獲得して取引量を増大させるために、スプレッドをいかに狭くするかということに腐心してきた。

かつてスプレッドはドル/円取引において1銭が基本だった。しかし、12年5月から営業を開始したSBI FXトレードがドル/円取引で「業界最狭」とされる0.19銭を提示してから、スプレッド競争は激化してしまう。

同社はボリュームディスカウントとは逆の発想で、1万通貨以下の取引に同スプレッドを適用。1万通貨超5万通貨以下の取引では、スプレッドを0.39銭とした。

こうした動きに呼応し、12年8月には、GMOクリック証券とDMM・com証券がスプレッドを0.3銭に縮小。さらにSBI FXトレードは、1万通貨以下を0.15銭、30万通貨までを0.29銭に引き下げた。

ところが円安の動きが一服し、取引高が細ってくると、FX業者の収益は落ち込むしかない。13年7月、GMOクリック証券はスプレッドを0・4銭に引き上げ、SBI FXトレードも1万通貨以下の取引について0・29銭に引き上げたのである。