NPO法人POSSE代表 ● 今野 晴貴
こんの・はるき●2006年、中央大学在籍中にPOSSEを立ち上げ、年1500件超の労働相談にかかわる。一橋大学大学院博士課程在籍。13年大佛次郎論壇賞受賞。
今野氏は「ブラック士業」という言葉の生みの親(撮影:尾形文繁)

違法なサービス残業や、ノルマ、パワーハラスメントなどで若い社員を使い潰す「ブラック企業」は、2015年、ますます増えていくだろう。ブラック企業はIT、小売り・外食・介護などのサービス業を中心に広がっているが、これらの業界は労働集約性が高いために、若い社員を「安く、長く」働かせる傾向が強く、しかも雇用全体での割合が増えつつあるからだ。

一方で、「安く、長く」働かせるノウハウを経営側に提供するコンサルティングも急激に成長している。たとえば、給与に残業代を組み込む「固定残業制」。時給800円の場合、40時間分の残業代を含んだ「月給」は17万6000円となる。これをそのまま「月給17万6000円」と表示するわけだ。

もし時給を最低賃金にセットして、月給25万円程度を提示すれば、過労死ラインを超える労働時間も「残業代なし」で命じることができる。今、最もはやっているブラックな労務管理法の一つだ。この巧みな労務管理は、ほとんどの若者が「仕方ない」と受け入れており、急激な広がりを見せている。

しかし、ブラックな労務管理は、一度問題化すると、「すき家」のように行政から指導されるなどし、あっという間にブラック企業の烙印を押されてしまう。筆者も社外取締役や金融機関などのセミナーでこうした労務管理の「リスク」について講演することがあるが、経営側でも危うい労務管理を行う企業になることを避けようという機運が広がっている。

ワンオペ(夜間1人勤務)や長時間労働で2014年にブラック企業の代名詞となった「すき家」。バイトが集まらず夜間営業中止や店舗閉鎖に追いこまれた(撮影:梅谷秀司)

こうしたブラックな労務管理をめぐる攻防は15年を通じ、まだまだ収まることはないだろう。それどころか、訴えるほうも、訴えられるほうも、ますますさまざまな「ノウハウ」を開発して、闘いがエスカレートしていく。その証拠に、若者の権利を擁護する側からも、経営コンサルタントの側からも、次々に新しい「労務本」が出版され、ブラック企業と社員の攻防は一種の「労働法バブル」の様相すら呈している。

五輪後までに激変する「正社員」の構図