ノーベル物理学賞を2014年に受賞した米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の中村修二氏に日米の研究事情を聞いた。

なかむら・しゅうじ●1954年生まれ。79年、徳島大学大学院修士課程を修了し日亜化学工業に入社。93年、高輝度青色発光ダイオード(LED)の開発に世界で初めて成功。2014年、ノーベル物理学賞受賞。

──日本では「中村氏は青色LED(発光ダイオード)の量産化技術の開発でノーベル賞を取った」と報道されています。

それはまったくのでたらめです。そんな報道をしているのは日本だけです。日本の新聞記者は科学論文を読んで検証することなく、誰かが言った解説を鵜呑みにして記事を書いているのでしょうか。高輝度LEDの科学論文を書いたのは私です。それを実現するまでの研究結果は『JJAP』(応用物理学会誌。英文)など学会誌に投稿し、掲載されています。

──量産化技術ではないとすると今回の受賞理由は何でしょうか。

1991年に良質な窒化ガリウムのバッファ層(ある下地基板の上に原子間距離も結晶構造も違う結晶を成長させるため、その間に結晶になりきっていない物資を挟む方法)の開発に成功したこと。92年にp型(電子の抜け穴が電子を運ぶタイプの半導体)窒化ガリウムを単に熱処理することで作成に成功したこと。それと同時になぜ今まで成功しなかったのかのメカニズムを解明したこと。これらが今回の受賞理由になっています。

ただ不思議なことに、高輝度を出すために決定的に重要な技術の(ガリウム原子の一部をインジウム原子に置き換える)「インジウム導入」は今回受賞理由になっていません。

このインジウム導入でなぜ高輝度が出るのかは実は依然謎なのです。東北大学の秩父重英教授は「インジウムを導入した窒化ガリウムには多数の局在準位が存在するから」ということを解明しています。しかし「そもそもなぜ局在準位が存在するのか」はまだ解明されていません。

──日本企業で働く研究者にもノーベル賞を取る可能性はある?