米労働者階級の没落と新上流の出現を描いた『階級「断絶」社会』の著者が米国の崩壊を語る。

Charles Murray●1943年生まれ。ハーバード大学で歴史を修めた後、平和部隊の活動に参加しタイに渡る。MITで政治学博士号取得。アメリカン・インスティテューツ・リサーチ(AIR)やマンハッタン研究所を経てアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の特別研究員。(Jay Westcott/AEI)

──著書に書かれている「米国を引き裂く新たな『断絶』」とは。

以前とは違う階級が生まれています。富裕層と貧困層はつねに存在しましたが、社会の最上層と最下層の文化が変化しています。単なる収入格差ではない、文化的な格差が生じています。

──以前と違う階級とは新上流と新下流ですね。前者にはシリコンバレーの起業家も含まれますか。

IT(情報技術)関係者もそうですが、新上流の重要な点はIQ(知能指数)が非常に高い、極めて聡明な人たちの集まりであるということです。この50年というもの、IQの高さが高収入の仕事を約束するようになってきました。弁護士や経営者もそうです。企業収益が拡大し続けているため、能力があれば、収入も上がっていきます。

──新下流が抱える問題は。

文化の変容です。以前は結婚が当たり前だったため、子どもたちはほぼ全員、嫡出子でした。が、今や労働者階級の子どもの半数以上は、結婚経験のない女性から生まれています。労働者階級のうち、既婚者は半分以下。その結果、コミュニティ(社会的・文化的な共同体)も崩壊しています。共同体は地元をよりよくしようとする既婚世帯に依拠しているからです。失業の大きな原因は家庭の崩壊にあります。労働者階級は、以前のような形で米国社会に参加していません。

原因は1960年代にさかのぼります。米国の労働者階級の間には、他者、特に政府から援助を受けるのは不名誉なことだという文化がありました。ですが60年代に(連邦)政府の低所得層救済プログラムが増え、援助を受けることが許容されるようになりました。そして仕事や結婚、育児を人生の主要目的と考えない男性が急増しました。

地域社会との絆回復と米国の文化再生が急務