[今週の眼]早川英男 富士通総研エグゼクティブ・フェロー
はやかわ・ひでお●1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2013年4月から現職。(撮影:梅谷秀司)

安倍晋三首相は11月、消費再増税を先送りして解散・総選挙に打って出た。一般には「これで増税が1年半遅れるだけ」との受け止めが多いようだが、それは大きな誤解である。

もし消費税率10%が最終目的地ならば、そこにたどり着く時期が1年半遅れても、さしたる問題はない。しかし、周知のように欧州諸国の付加価値税率は20%台が普通だ。高齢化がはるかに深刻な日本で、10%の税率でやっていけるはずがないではないか。米国のように、公的医療保険さえ完備されない社会保障に満足するのでないかぎり、最終的には最低20~25%の消費税率が避けられないと多くの専門家は考えている。消費税率10%は、あくまで一つの通過点としてとらえる必要がある。

そのうえで、「中長期の経済財政に関する試算」(2014年7月内閣府公表)という資料を見てみよう。政府は20年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)黒字化を公約としているのだが、この見通しによれば、15年10月に消費税率を10%にしても、20年度には11兆円弱のPB赤字が残るという。一見不可解な試算である。