有料会員限定

市内生産の9割消失 和歌山・有田の苦悩 工場閉鎖が突きつける地域経済の袋小路

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16
拡大
縮小

ENEOS和歌山製油所の閉鎖発表の翌日、知事は本社へ直談判した。

約80年操業を続けてきた和歌山製油所。ここでは協力会社の社員を含め1300人が働く

特集「工場が消える」の他の記事を読む

ミカン畑が広がる丘から海沿いを見渡すと、赤茶けた工場が広がる。2.5平方キロメートルほどの広大な敷地を作業員の運転するトラックがひっきりなしに行き来する。

和歌山県有田(ありだ)市、大阪の中心部から南へ70キロメートルほど離れた人口3万人弱の地方都市が揺れている。市を支えてきた基幹産業の拠点であるENEOSホールディングスの和歌山製油所が、2023年10月をメドに閉鎖されることが決まったからだ。

和歌山製油所の生産能力は同社の原油処理能力の7%に相当する1日当たり12.8万バレル。

1941年の操業開始から、製油所は80年にわたって「当たり前のようにそこにあった」(地元住民)。市の盛衰はこの産業とともにあったといっても過言ではない。住民は「釣りなどのレジャーも盛んで、若い人の活気が満ちていた」と、重化学工業が盛んだった昭和の時代を懐かしむ。

しかし、人口減少による全国的なガソリン需要の縮小や脱炭素化の潮流は容赦なく襲いかかる。

ENEOSをはじめとする石油元売り各社は精製能力の縮小を余儀なくされている。ENEOSはこれまで室蘭(北海道)と知多(愛知)での製造を停止。根岸(神奈川)でも22年10月に1ラインを廃止する。

同社の大田勝幸社長は1月25日の記者会見で「サプライチェーンの見直しは続く。ここ(和歌山の停止)で終わりになるかはわからない」と話した。

発表翌日、知事の直談判

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内