慰安婦問題で変わる韓国 “聖域"崩壊の過程を描く ジャーナリスト 沈 揆先氏に聞く

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Shim, Kyu-sun 1956年韓国生まれ。ソウル大学国語教育学科卒業。韓国の保守系大手紙「東亜日報」社に入社。東京特派員、編集局長、論説室長などを経て、現在、ソウル大学日本研究所客員研究員。『日本を書く』『ジャパンウオッチャー』など著書多数だが、邦訳は本書が初めて。
慰安婦運動、聖域から広場へ 韓国最大の支援団体の実像に迫る
慰安婦運動、聖域から広場へ 韓国最大の支援団体の実像に迫る(沈 揆先 著、箱田哲也 訳/朝日新聞出版/2530円/416ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
日韓関係における懸案中の懸案、慰安婦問題で大きな力を持ち、韓国政府やメディアさえも逆らえなかった市民団体「正義連」(日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)。その中心人物・尹美香(ユンミヒャン)氏が起こした事件は、韓国メディアの報道を変えつつある。スキャンダルで噴出した問題、日韓メディアの役割とは。

反韓報道の日本メディアはまるでかつての韓国メディア

──尹美香事件は、彼女と肩を並べて運動してきた1人の元慰安婦・李容洙(イヨンス)さんという当事者による、団体の金銭管理に疑問を呈する告発から始まりました。

この事件が韓国を強く揺るがしたのは、何よりも李さんという運動団体の核心人物が尹氏を手厳しく告発したからだ。そして、透明性を持って運営していると国民が信じていた慰安婦団体への失望が広がり、さらには、尹氏という慰安婦支援運動で国会議員にまでなった人物の事件だったためです。

──慰安婦問題で韓国メディアは、支援団体の論理や主張がすべて正しいといった報道をしてきた印象が日本ではあります。

韓国国内は大きく保守と進歩(革新)に分かれています。両者とも違いを認め、共存を志向するはずですが、最近は相手方を認めようとしません。

さらに「陣営論理」というものがあります。双方とも、自陣営の人が過ちを犯してもそれを過ちと認めず、逆に相手陣営のわずかな過ちでも大きな過ちだと考えがちですが、今回は違った。

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