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日銀 円高恐怖症の原点 ニクソンショックと隠された失態

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日本の通貨政策が「円高恐怖症」に陥ったのはなぜか。練達の日銀ウォッチャーによる発掘スクープ。

1971年8月15日にテレビ演説するニクソン米大統領。真夏の夜の奇襲攻撃は、日本の通貨当局に強烈なトラウマを残した(AP/アフロ)

この30年ほど、日本銀行を観察してきた。人々の暮らしや国の行く末を左右する通貨政策の決定プロセスを知りたいという好奇心に支えられた、いわば趣味的な活動だったが、当局者たちとの長い交友は図らずも『平成金融史』(中公新書)、『ドキュメント日銀漂流』(岩波書店)などの歴史検証につながった。

日々のニュース報道から距離を置き、長い時間軸で俯瞰してみると、この国の通貨政策がつねに「円高恐怖症」に支配されていること、そしてその淵源が半世紀前に起きたニクソンショックにあることに気づかされる。

いくつか例示しよう。現在の異次元緩和政策はリーマンショック後の超円高デフレが発端となった。2001年の量的緩和導入もその前のゼロ金利に至るアプローチも底流には円高回避を求める政財界の強い声が流れていた。

さらにその前、平成バブルを助長した1980年代末の長すぎた金融緩和路線が、ルーブル合意後の円高阻止を旗印としたことは周知の事実である。そして70年代半ばの狂乱インフレも、石油ショックというより、円切り上げ阻止のための大量の為替介入が招いた過剰流動性と金融引き締めの遅延が主因であり、その源流をたどっていくと71年夏のニクソンショックに帰着する。

真夏の夜に大統領が放ったパンチの威力に加え、日本側の誰一人予期できなかったというショックもあり、政財界はもちろん通貨当局の大蔵省(現財務省)や日銀に、形容しがたい敗北感と円高恐怖症を植え付けたのだ。

くしくも今年はこの「重大経済事件」から50年の節目に当たる。当時の当局者が残した数々のオーラルヒストリーと新たに入手した資料を手がかりに、あの夏をもう一度検証してみよう。

衝撃の大統領演説

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